北海道東部の湧別町に建設したバイオガスプラントは、 メタン発酵の技術を利用して乳牛ふん尿を処理するものであり、 堆肥化施設を併設している。 このプラントにおいて計測したデータをもとに、 1週間単位でのエネルギー収支モデルを構築した。 このモデルを用いて殺菌温度や発電機の有無といった条件を変えてエネルギー収支をシミュレーションした。
このシミュレーションモデルでは、 まず、 1分毎の必要電力量及び必要熱量を算出する。 次に、 利用可能なバイオガスが貯留されている場合は、 発電機及びガスボイラーで電力及び熱を供給するものとする。 逆に貯留量が少なくバイオガスが利用できない場合は、 商用電力及び重油ボイラーにより電力及び熱を供給するように計算する。 プラントの運転状況は管理人が勤務する平日と、 管理人が不在となる休日では大きく異なり、 1週間で1サイクルとなるためシミュレーションも1週間分の計算を行った。 シミュレーションの入力条件として、 発電機の有無、 4パターンの殺菌条件、 夏と冬での平均気温の違いを設定し、 合計16通りのシミュレーションを行った。
シミュレーションにより次のことがわかった。
殺菌温度を低くすると、 プラントでの消費エネルギー量は小さくなり、 エネルギーの自まかない率 (バイオガス起源のエネルギーが占める割合) は大きくなる。
しかし、 夏期には殺菌温度を60℃あるいは55℃に下げると必要熱量が大幅に抑制されるため、 余剰バイオガスが生じることが定量的に確認できた。 また、 この条件では、 自まかない率は60%前後にとどまっていた。
余剰ガスを発生させることなく、 殺菌温度の抑制によって自まかない率を向上させるためには、 たとえば発電機の運転の自動化によって夜間も発電し、 発電に配分されるバイオガスを増加させることなどが必要である。 このように、 エネルギー収支の改善のためには、 運転条件の変更と構成機器の機能改善を組み合わせて検討する必要がある。
夏期の60℃及び55℃殺菌時を除き、 それぞれの殺菌温度において発電機の有無によるエネルギーの自まかない率の差は小さかった。
このシミュレーションを用いることで、 たとえば、 固液分離を行わないと想定した場合のプラントのエネルギー収支や必要経費の試算などができる。 |