粘土鉱物であるスメクタイトは吸水膨張等により岩石の劣化を促進させるため、その分布や性状を把握することは、道路斜面の安定性の評価や斜面対策の実施上、きわめて重要である。付加体の緑色岩中にはスメクタイトを含む場合があるが、その形成及び風化過程は十分解明されていない。今回、緑色岩における同過程の解明を目的に、詳細なコア観察とX線回折分析やEPMA等による鉱物試験を一般国道333号の斜面で掘削されたボーリングコアを対象に実施した。地質は付加体である常呂帯
仁頃層群の緑色岩類である。
調査の結果、同緑色岩は新鮮部においてもスメクタイト成分を含む緑泥石が確認され、地山深部のせん断面沿いでは緑泥石中のスメクタイト成分が多いことが判明した。さらに、地表付近では、スメクタイト成分の増加は4面体及び8面体イオンの減少によって進むのに対し、せん断面沿いでは層間陽イオンの価数増加によって進むことが判明し、両部分では岩石の風化過程が異なることが判明した。
以上のことから岩盤劣化の過程は次のように考えられる。緑色岩にはスメクタイト成分を含有する
多数の潜在せん断面が分布しており、地山の隆起等で地表に近くなるとせん断面が顕在化する。そして、スメクタイト化が急速に進行し、他の岩盤より地山深部まで急速に劣化が進む。このことが付加体緑色岩地域の斜面の劣化過程、さらには岩盤崩壊機構を規制していると考えられる。 |