積雪寒冷地の冬期における漁港や港湾では、風雪等の厳しい気象条件、さらには高齢化等の要素も加わり過酷な作業環境下にあり、作業効率低下や健康障害、作業の安全性が懸念されている。こうした冬期就労環境を改善するために、現在、北海道の漁港・港湾においては、防風雪施設の整備が行われつつあるが、施設整備による作業環境改善効果の定量的な評価手法、費用対効果につながる便益の定量的な評価方法は確立されていないのが現状である。そこで著者らは、低温室や冬期の野外を利用した低温環境下での温熱感覚に関する被験者実験を過去に実施してきた。本研究では、過去の実験に引き続き、被験者実験を行い、寒冷環境下における温熱心理(温熱感覚)を定量的に評価できる温熱指標について検討した。実験に参加した被験者は20代~50代の男女8名で、実験毎に45分間暴露し、温冷感や熱的快適感などの温熱心理反応を自己申告してもらった。SETやWCI など、予め抽出した5つの温熱指標の低温環境下における適用性について検討した。検討した温熱指標はすべて有効で、各温熱指標値と温熱感覚との関係(回帰曲線)の男女間の差、屋内と屋外との差が認められなかった。実用的には、既報と同様に、入力値が風速と気温のみで計算方法も簡便なWCI が最も有効であることが再確認された。また、タッピング試験を実施し、温熱環境が作業能力へ及ぼす影響に関する基礎的な検討を行った結果、温熱環境を示す温熱指標と暴露時間に応じた作業低下率を定式化できる可能性を確認した。
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