冬期間の北海道の多くの河川は気温の低下とともに結氷し、その一部の河川ではアイスジャミングによる水位上昇、晶氷による取水障害など結氷に伴う工学的な問題が生じている。これらの問題に対する解決策の確立が望まれているが、アイスジャミングの要因となる氷板の形成過程や晶氷の挙動については、観測自体が困難であることもあり十分には解明されていない状況にある。本研究は、結氷現象の解明の第一歩として、アイスジャミングが発生する渚滑川と発生しない湧別川を対象として、氷板の形成過程に着目した現地観測を行いその経時変化を明らかにし、氷厚変動計算を実施して氷板の形成過程についての検討を行った。研究成果として、氷板と晶氷の経時変化を5 つに分類しその挙動を把握するとともに、渚滑川と湧別川のような晶氷が多く流下する河川を対象とした「晶氷の氷化」を考慮した氷厚変動計算モデルの構築を行い、この新しい計算モデルは氷厚をより良く再現する事から、氷板の形成過程に「晶氷の氷化」が寄与する可能性を示した。渚滑川と湧別川の「晶氷の氷化」の違いについては、アイスジャミングが発生する河川勾配の緩い渚滑川は、湧別川に比べて氷底の摩擦速度が小さいため晶氷が滞留しやすく、かつ水温が低いため、「晶氷の氷化」が起きやすく氷板厚が増加する河川であると今回の検討結果より推定された。
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