港湾・漁港では防波堤などの構造物が本来有している海藻繁茂機能をさらに強化した自然調和型構造物を整備している。しかし、ウニの摂餌圧が原因のコンブなどの大型海藻群落が消失する磯焼け現象が、こうした構造物にも生じていることが確認されている。そこで、水産土木チームは、海藻が着生するための基質が波浪により動揺する人工動揺基質を開発した。動揺する基質にはウニが移動できないため、これを構造物に取り付けることにより海藻が生長力の弱い幼芽期にウニの摂餌圧から保護され、十分な大きさに生長してからウニが摂餌できる藻場再生技術である。本研究では、ウニによる磯焼けが確認されている江良漁港に人工動揺基質を設置し、海藻着生効果を確認するための現地調査を実施した。
その結果、周辺のブロックや自然岩礁にコンブの着生がない状況において、設置した人工動揺基質には繁茂が見られた。海藻着生機能は、3年目の人工動揺基質でも確認された。また、生長したコンブにはウニの摂餌痕が確認された。着生したコンブの固着力は、天然岩礁と同程度であった。これより、人工動揺基質は、ウニによる磯焼け海域における防波堤などの沿岸構造物に藻場を再生させ、水産有用種であるウニの摂餌場を造成する手法として有効であることが確認された。
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