塩害や凍害を受けるコンクリート構造物への劣化対策の有効な手段として、塩分や水分等の劣化因
子の浸入を防ぐ表面被覆工法があるが、コンクリート表面を覆う被覆材等の低温環境下における接着
性や耐凍害性等の性能は明らかではなく、施工後比較的早い段階で被覆材等に浮きなどの変状が生じ
ている事例も報告されている。このため、本研究では、低温環境下における被覆材等の変状防止等の
検討を目的に、北海道でコンクリート構造物の耐震補強や剥落防止に適用されている繊維シート接着
工法の施工実績調査及び現地調査等を行った。その結果、調査を行った構造物の約2割の繊維シート
やシート保護材に大きな変状が確認された。更に、事例調査を行った結果、シート保護材の変状は、
ポリマーセメントモルタルの初期ひび割れ等から融雪水が浸入し、凍結融解作用により拡大したと考
えられ、繊維シートの変状は、施工時におけるシートの接着不足もしくは空気溜まりの除去不足が原
因であると推測できた。また、今回の調査において、繊維シート施工時の品質検査で通常行われる目
視、打診調査で検出できない浮き等をサーモグラフィ調査によって検出できたことから、今後、繊維
シート接着工法のより高い施工管理検査を行うため、サーモグラフィ調査は有効であると考えられる。
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