出水時に河道内を流下する流木は、橋脚等や取水施設等に集積し、堰上げによる氾濫や構造物の破壊といった重大な被害を及ぼすことから、その流下と集積に関するプロセスの解明が求められている。しかしながら、これまで、流木の橋脚への集積状況や山地渓流からの流出に関しては、現象そのものがイベント期間を通して連続的に観察された例はほとんどなく、詳細な機構は未だ明らかとなっていない。本研究では低コストでフレキシブルな可搬型の観測システムを提案し、実際の河川を対象として流木挙動の観測を行った。これは商用電源やネットワークとは独立した稼働が可能なシステムであり、市街地から離れた地域など、これまでインターネットベースのシステムでは観測が困難であった土地における観測を可能とする。このシステムを用いて、出水時に随時流木の挙動を観測することで、システムの有効性を確認するとともに流木の挙動に関する知見の蓄積を試みた。結果として、流木の流下数ピークが水位上昇のピークに先行して観測されることが確認された。また本研究では前述の流木流況観測と同時に、発生源での流木の移動機構の把握を目的として簡易な無人観測システムを構築し、山地渓流域における流木の移動状況の調査を行った。さらに、本研究では流下中の流木が流れ場の構造によって集中化する機構の解明を目的として、実河川を模擬した複断面形状を有する蛇行水路において流木流下実験を行った。実験では、水面の追跡粒子と流木模型の双方に二値化相関解析によるParticle Tracking Velocimetry (PTV)を適用することで、流れ場と流木輸送の平面的な構造を明らかとし、両者の関連について検討を行った。この結果、流木は流下時において、渦度の高い領域を避けるように移流していくことが確認された。
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