寒冷地において、劣化したコンクリート開水路を表面被覆工法で補修した場合、表面被覆材と躯体コンクリートおよびそれらの間にある断面修復材における温度変化や、表面被覆材、断面修復材と躯体コンクリートとの接着部における温度変化は、補修部の耐久性に影響を与える。本研究では、3種類の表面被覆工法(無機系表面被覆工法、有機系表面被覆工法、パネル取付け工法)で補修した農業用コンクリート開水路の側壁が1年間に受ける凍結融解回数を算出し、補修によるコンクリートの凍結融解作用の緩和効果等を検証した。その結果、開水路のコンクリートが受ける凍結融解回数は無機系表面被覆工法では7回程度、有機系表面被覆工法では断面修復した場合で5回程度、断面修復しない場合で17回程度となり、無補修の36回程度に比べてそれぞれ約1/5、約1/7、約1/2に減少した。また、パネル取付け工法のうち、FRPM 板と水路の間に発泡ポリエチレン製緩衝材を用いた場合では緩衝材の断熱効果で躯体コンクリートの凍結融解はほとんど生じなかった。このように、表面被覆材による水路躯体コンクリートの凍結融解作用の抑制効果が認められた。また、水路躯体コンクリートとの接着部における凍結融解回数は、無機系表面被覆工法で54回/ 年、有機系表面被覆工法で断面修復材を施工した場合は49回/ 年程度、断面修復材を施工しない場合は75回/ 年程度であった。これらの結果は、補修材料自体や補修材料と躯体コンクリートの接着部に対する劣化促進試験において、凍結融解サイクル数と現地での相当年を対応させることで、寒冷地における表面被覆工法の耐用年数推定に役立つ。
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