平成23年9月、台風や前線の停滞に伴う記録的な降雨が道内各地でもたらされ、十勝川水系音更川流域では、平成元年以降第2位の規模となるピーク流量および最高水位が観測された。この豪雨によって、音更川中流KP18.2左岸側では、堤防の一部流出が発生するなど流域各所で大規模な低水路河岸の侵食が確認される事態となった。元来、急勾配河川である音更川は、出水時の流速が非常に速く土砂の移動も活発であり、流路が変動し易いといった特性を持つ。今回の被災は、低水路内を流れる流路が徐々に蛇行を発達させ、低水路河岸を侵食し、やがて堤防へと達したものと推察されている。本研究では、今後、このような事態に対応した適切な予防措置を講ずることができるよう、流路が河岸侵食を伴って蛇行を発達させるメカニズムの解明に向け、まずその準備段階として、侵食箇所周辺の土質データの収集と侵食状況の概略的な把握を行った。さらに、出水前後の河道変遷状況を整理し、蛇行流路の平面形状の変化や、洪水ごとの流量ハイドロ曲線の違いなどから、蛇行発達の要因について簡易的な考察を行った。その結果、音更川のような急勾配河川では、たとえ低水路内で収まるような流量規模であっても、その継続時間によっては蛇行流路の振幅は大きく増大し、一洪水期間のうちに、それが堤防を浸食するまでに発達する可能性があることがわかった。また、そのような蛇行発達は、土砂の移動限界を越える流量が長時間に亘って継続したことに起因するものと推察された。 |