農業経営規模の比較的大きな北海道の稲作地帯では、高齢化や少子化の進行に対応して農地利用を維持するため、担い手農家への農地継承が進んでいる。それゆえ、近い将来に1戸当たり30ha 以上の大規模経営に移行すると予想されている。このため、水田地帯の一部では、水田の高度利用と農作業の効率化を目指して、地下水位制御システムを有する大区画水田の整備が進められている。このような地域を対象とした用水計画手法や配水管理技術を検討するためには、農家による圃場水管理の実態と、それに伴う地下水位・湛水深の変化パターンの把握が必要である。しかし、地下灌水時における土層内の水動態や圃場内への給水状況を詳細に観測した研究事例はほとんどない。このような背景から筆者らは、地下水位制御を行う大区画水田圃場内における地下水位等の現地観測を平成23年度から開始した。その結果、地下水位制御システムを有する圃場では、水稲直播栽培初期の浅水管理など水稲の生育ステージに合わせた適切な地下水位の調整が容易となることを実証した。また、代かき用水の取水や直播栽培の初期入水を地下から行った場合における圃場内への給水状況では、暗渠埋戻し部が飽和された後、作土層への水分供給が進行して圃場全体に広がることが推察された。
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