落石覆工構造物の安全性確保のためには、1)落石等によって本体構造物に作用する衝撃力の正確な算定、2)落石覆工構造物の耐衝撃特性の解明、3)緩衝性能や荷重の分散性に優れた緩衝構造の開発、などが必要であり、この種の問題に関しても精力的な研究が続けられている。特に、落石等によって発生する衝撃力の算定は設計の基本的条件の設定として重要と考えられる。これまでの研究により、従来からの敷砂緩衝材を緩衝構造として用いる場合には落石等によって発生する敷砂への衝撃力と本体構造への伝達衝撃力は大きく異なることが明らかになっている。[*]本論文の三層緩衝構造は表層に敷砂、心材として鉄筋や新素材繊維製ロッドを補強筋とするコンクリート(RC)床版、裏層に発泡スチロール材を用いたものである。本構造は三種類の異なる波動伝達特性を有する材料の組み合わせにより、優れた緩衝性能を得ようとするものであり、その効果は実規模の実験で確認されている。しかしながら、未だ三層緩衝構造を用いた場合の伝達衝撃力算定に関する理論的な扱いがなされていない。[*]三層緩衝構造は物理的、力学的特性が大きく異なる三つの材料から構成されているため、緩衝性能を各材料の動特性を考慮して理論的に定式化することは困難であると考えられるが、落石覆工の実設計適用するため、本論文では、実証実験の結果に基づいた三層緩衝構造の各層の動特性を考慮し、エネルギー論的観点から三層緩衝構造の伝達衝撃力評価式の定式化を試みた。 |