港湾構造物の整備に際しては、積極的に自然環境と調和する機能を付加することが求められている。砂浜域に位置する重要港湾釧路港の島防波堤は、本体工の背後に盛土による浅場を設けた背後盛土付防波堤構造としている。背後盛土には航路・泊地工事で発生する浚渫土砂を利活用することにより陸上処分にかかる費用を削減し、同時に陸域への環境負荷を低減する。また、背後盛土の土圧による抵抗力が期待できるため、防波堤本体の規模を縮小することができる。これに加えて、背後盛土による浅場には岩礁性の藻場の創出が期待できる。この背後盛土付構造物における藻場機能については初期段階の検討は行われているが、長期的な藻場の形成過程や良好な世代交代を促すための新規加入群の参入条件などについては不明な点が多い。本研究は、長期間にわたる調査により、多年生海藻の新規加入群に着目した藻場を維持していくための要因について検討した。その結果、島防波堤では、岩礁性の藻場が持続的に形成され、十分に藻場創出機能を有している。また、海藻着生は天端部に限られるが、良好な光環境と着生基質の保持により、新規加入群が参入し世代交代が順調に行われることで、藻場の持続性が確保されていることが判明した。
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