北海道南部の高標高(標高600~680m)に18年前に造成された未熟火山性土の放牧地で裸地や草勢劣化、あるいはミズゴケの繁茂による荒廃化が進行しているところがある。そこで、草生劣化程度の大きい部分(劣化部I)、草生劣化程度の小さい部分(劣化部II)およびミズゴケが繁茂している部分(ミズゴケ部)で荒廃状況と土壌の性状等を草生良好部を対照として調査した。a)劣化部Iの斜面下部では小規模な浸食が発生していた。剪断力および容積重は草生良好部>劣化部II>劣化部1であり、粗孔隙量は逆の関係であった。劣化部Iでは冬季に積雪が少なく、地表面が露出しており、土壌凍結深は30cm以上であり、良好部では積雪70cmで土壌は凍結していなかった。裸地化や劣化部の形成は①凍結融解作用で表土が膨軟化し、②放牧牛の歩行(蹄圧)により、表土が剥離し、除去された部分が裸地部となった。③裸地化した部分は土壌浸食を受け斜面上に拡大した。④表土が膨軟化したり剥離した部分は養水分の供給が不十分なため草勢が弱まった。b)ミズゴケ部では牧区外から、初夏でも融雪水が流下しており、土壌の窒素、リン酸およびカリ含量は良好部に比べ少なかった。 |