魚類・昆虫類といった動物から河畔林やヨシなどの植物に至るまで、河川空間における多様な生物生息環境に配慮した多自然型川づくりが全国的に展開されるようになってから、およそ10年程度経過した。この間、それぞれの現場においては多自然型川づくりの先進地域であるヨーロッパなどからその技術や考え方を導入し、また日本古来の河川改修技術を再評価しつつ現在の工法と融合を図りながら、事業が進められてきている。こうした、自然環境を重視した事業の展開は今日の社会的二一ズをふまえて実施されているのであるが、施工後において、果たして当初想定したような効果を上げているのかどうかの適正な評価は、環境という対象の要素の複雑さから十分行われているとは言えない。とくに実際面で事業の計画や施工に携わる河川技術者サイドから、自分たちが設計・施工した工事に対して客観的な評価を下し次の工事に反映させていくための、評価手法の確立の必要性が強く指摘されている。[*]本研究は、多様な河川の自然環境のうち、河川改修によって最も影響を受ける要素の一つである魚類について、施工による生息環境の変化や効果の程度を判断するための指標づくりを試みたものである。 |