冬季に寒冷な北海道での1960年から1995年にかけた、酪農の発展過程のその課題を整理した。1)寒冷な道北や道東では酪農専業化が進行し、十勝、網走地域では畑作専業から畑酪化が、道央や道南では水田専業から、酪農との複合化が進行した。2)飼養戸数は約1/5に減少する一方で、飼養頭数が約5倍に増加し、戸当たり飼養頭数は26倍に増加した。乳牛の高泌乳化(3649kg/年から7133kg/年)に伴い乳牛1頭当たりの糞尿量も40kg/日から60kg/日に増加した。このため、北海道酪農での年間糞尿量は220万tから1350万tに増加し、戸当たりでは38t/年から1137t/年に増加した。3)北海道の主要畜産は酪農であるが全畜産からの糞尿を全耕地に均等散布した場合、糞尿に含まれるNの還元量は全支庁で150kg/ha以下であり、環境汚染を惹起しない(志賀)が、酪農家は糞尿貯溜施設、散布機会および散布労働に不足している。4)このため、酪農家近傍での耕地における養分の過剰集積、井戸水の汚染、あるいは水質や悪臭に関する苦情が増加している。5)酪農糞尿の有効利用を阻害している要因として、ア)草地の分散、イ)化学肥料や購入飼料の低廉化、ウ)春先の融解土壌の低地耐力、およびエ)晩夏以降の降雨日の増加があった。これらに基づいた対策の必要性を述べた。 |