アンカーを施工した地盤に凍上が発生すると、アンカー引っ張り部緊張力が増大する。最悪の場合、凍上力がアンカー各部の許容力を超え、アンカーは破壊されてしまう。このような被害を無くすことを目標に、凍上を考慮したアンカーの設計を行うため基礎資料として、室内での凍上実験を実施した。実験では異なる性質の土3試料について土質による、凍上量、凍上力の違いを確認し、さらに、凍上を許容することによって凍上力が抑制されることを確認した。次いで、凍上しやすい試料を用いて、温度、供試体高さ、給水の条件を変えた時の、凍上量凍上力を求める実験を行い、これらの条件と凍上量、凍上力の関係を明らかにし、「外気温が低いと凍上量は小さく、凍上力は大きくなる傾向がある」、「供試体の高さが小さい、すなわち地下水位が高いと、凍上量、凍上力とも大きくなる」、「水の供給を遮断すると凍上量は小さくなる」の3点に整理できた。また、現場試験アンカーと室内試験結果の関係を検討した結果、現場における凍上力は、実験値の1割程度であった。アンカー施工現場において、土の凍上試験などから凍上性が高いと考えられる場合、凍上実験で計測される最大凍上力の1割程度の凍上力を設計アンカー力に加算することが、当面、妥当と考えられた。 |