道路管理者が実施する交通安全対策は、道路改良から標識設置まで多岐に渡るが、交通安全上明らかに問題のある地点が順次改良された結果、事故の要因が明確でないために有効な対策が立てられない箇所が残る傾向にある。本研究では、事故要因分析や対策立案、効果の検証等において中心的な役割を持つ交通事故データを補完する手法として、日常的な交通流に含まれる様々な錯綜現象に着目しその調査方法を提案するとともに交通安全対策への活用方策に関して検討を行った。具体的には、道内の交通事故多発地点のうち札幌市内の事故多発交差点を選定し、ビデオによる交通流の長時間観測を行い、事故に発展する可能性を持つ錯綜現象を抽出するとともに、これらに有効と思われる交通安全対策を検討した。そして、ビデオ観測結果より、以下のことがわかった。1)交通事故多発地点のビデオ観測により、事故に結びつく危険性のある錯綜現象が確認できた。2)観測地点においては、通過位置、優先順位、車線変更などに多様な乱れが生じており、交差点を早期に通過しようとする運転者の自己中心的な判断傾向がこれらに共通するものと推察される。3)冬期は錯綜現象が減少しており、凍結路面や沿道の雪堤等による運転自由度の低下が影響したものと推察される。4)錯綜現象の観測は、交通流の潜在的危険を具体化する点で交通安全対策の拡充に有効と思われる。 |