北海道東部に位置する網走湖は、近年の降雨量の減少、及び網走川を通じてオホーツク海より遡上し湖に流入する海水に起因し、上層が淡水、下層が塩水である汽水湖を形成している。そのため、強風時には無酸素状態の塩水層が水面付近に巻き上げられる青潮が発生する。この塩水層に起因する青潮、アオコといった現象は、湖の漁業及び環境に大きな影響を与えるため深刻な社会問題となっている。この網走湖の水理的な特性の把握を試みる研究の一環として、網走川を遡上する塩水の挙動に着目し、それを解明するため河口より5kmの網走川大曲地区に存在する180度にも及ぶ大曲部において、湾曲部特有の二次流や、網走港の潮位変化による流動の変化、及びそれに伴う塩水の遡上の様子をとらえることを試みた。[*]本論文では、1997年の融雪時及び大潮時に、網走川大曲地区に存在する大湾曲部において行われた観測の結果報告と、それら実測値と3次元数値計算モデルとの計算値との比較の報告を主な目的としている。融雪時観測、大潮時観測ともに、主流方向流速、二次流方向流速、塩分濃度のそれぞれが潮位と対応した現象を形成し、数値計算においても一部の複雑な現象を除けば実測値を再現することができた。 |