都市化の進展などのような地被状況の変化による流出特性への影響を的確に表現できる流出モデルを作成することは、水文学上の大きなテーマの一つである。そのためには実流域における都市化と流出形態との応答を観測したデータの入手が不可欠である。[*]本論は、北広島市輪厚川流域において都市化が進んできた昭和45年以降の水文観測データを用い、損失機構を導入した貯留関数モデルによる流出解析を行って、土地利用と流出形態の経年的な変化を比較し、都市化に伴う地被状態と流出形態の関係を把握しようとするものである。[*]解析の結果、損失機構を導入した貯留関数を用いて、近年の流出特性の変化が流域の自然域の面積減少と一致した傾向を有していることを確認した。これは、従来の一般的な貯留関数法、すなわち前期無効降雨のカットや、基底流出の分離を行って算出した有効雨量を用いる貯留関数モデルでは、計算できなかったことである。なぜなら、無効降雨や基底流出の中に、流域の状態変化に伴う流出現象の変化が隠されているからである。[*]損失機構を導入した貯留関数では、損失項を含めたパラメータ同定を同時に行うことができるため、観測雨量および観測流出高を「直接」用いた解析が可能となった。このため、最適化したパラメータの客観的な比較が可能となったものである。 |