堤防の質的強化と管理の軽減化の双方を満足する工法の開発を目指して、近年土木分野において補強材として利用されている不織布に着目し、堤防補強材としての有効性について実験により検討した。本実験は平成8年度から大型開水路を用いて行われ、疑似堤防法面に不織布を露出状態で敷設し、3m/sec程度の流速条件下での侵食状況を把握した。その結果、不織布は透水性が高いため背面下に流れが生じ、またシート材が激しく動揺することから、堤体土の下方への流動と細粒分の流出による法面の変形が認められた。しかしこの課題は、敷設方法の工夫により解決すれば、堤体の壊滅的な破壊をくい止めたり進行を遅らせる効果が充分期待できるとの示唆を得た。[*]本研究では、上記の結果を踏まえ、シート材の動揺を制御する工法を工夫し、その効果を確認するための水路実験と、堤防越流時の法面侵食実験を行った。その結果、堤体の法尻方向への崩落と侵食の拡大を防ぐ効果が確認され、侵食防止工法として有効であることが示された。また、堤防越流に対しては堤体表面を砂利層と不織布との層構造にすることによって、侵食防止効果が高められること、とくに越流時に弱点となる堤防法肩部の保護に高い効果を発揮することがわかった。 |