本論文は設置から5 年経過した道路橋床版防水層を対象として、引張接着試験およびせん断疲労試験を実施し、付着性状について検討したものである。以下に得られた知見を示す。
・床版全面に渡り実施した引張接着試験では、車道幅員端部に設置されたウレタン樹脂系防水はすべて付着性能を消失していた。一方アスファルト加熱型塗膜系防水では、局部的に付着性能の低いものがあり、コア採取位置による付着性能の大小関係を見出すことが出来なかった。多くが床版防水層の破壊であるが、床版コンクリートの砂利化も一部確認された。
・せん断疲労試験は輪荷重作用の有無に着目し、施工や環境による影響が少ないと考えられる、隣接する輪荷重走行帯および非走行帯を対象に実施した。試験結果はばらつきが大きく、分散分析によると有意差は無い結果となった。実橋供試体と室内供試体を比較すると、
せん断疲労寿命はおよそ1 オーダーの差が生じる結果を得た。
・実橋供試体について破壊断面を観察すると、多くは床版防水層の破壊であったが、疲労寿命が平均疲労寿命に比べ極端に小さいものは、床版コンクリートの材料破壊や、珪砂の量が著しく多く接着不良のものが確認された。珪砂散布に関しては、接着性を阻害しない均
一な散布方法などを検討する必要があると考えられる。それぞれのコアはお互いに近い位置で採取されているにも関わらず、施工状況や床版コンクリートの状態が異なっているものと推察される。
・本論文では1 橋に対して引張接着試験およびせん断疲労試験を実施したが、劣化経過のメカニズムは不明な点が多い。施工法や劣化要因などについて、さらなる検討が必要である。 |