農地還元は家畜ふん尿の処理や肥料成分の有効利用のために不可欠であり、酪農の大規模化に伴いスラリー状での草地還元が増えている。堆きゅう肥を土壌に混和した場合、土壌微生物の数や量、土壌酵素活性を増加させることはよく知られているが、スラリーを表面施用したときの変化はあまり調べられていない。そこで、酪農学園大学において3種類の土壌を用いたカラムで牧草を栽培してスラリー施用試験を行い、その中で土壌微生物特性の垂直分布を調査した。[*]α-グルコシダーゼ活性は土壌微生物活性を示す指標となる。施用区1層目(0~10cm)の活性はどの土壌でも無施用区や2層目以下より高かった。また1層目の活性は経時的に増加し、牧草の収量と正の相関があった。微生物活性や易分解性有機物量を示す土壌呼吸は2つの土壌の1層目で、土壌微生物を示すバイオマス窒素量は1つの土壌の1層目で、スラリーの影響がやや見られた。しかしそれ以外は、スラリー施用による明確な変化は認められなかった。表面施用したスラリーからは無機成分の下方移動がおこっており、施用により収量も増加した。しかし、地力に係わる土壌微生物への影響は、地表から数cm程度のごく表層に限られることが明らかになった。 |