酸性硫酸塩土壌の露出した切土法面の緑化は法枠を打設し、厚さ20cmの良質土を置換する工法が採られてきたが、工費が高い(約16千円/m2)。そこで、遮水シートを敷設後、植生基盤を造成する区(遮水シート区(S区):5千円/m2)と、炭カル吹付け層を作成後、植生基盤を造成する区(中和工法区(T区):8千円/m2)で緑化を試験した。1)S区では、牧草種子は発芽・生育したが、造成2年後には殆ど枯死した。一方、T区の牧草は造成4年後でも繁茂していた。2)両区の植生基盤のpHは6-7であった。3)S区の酸性硫酸塩土壌の深さO-30cmのpHは造成2年後に5前後であった。T区の酸性硫酸塩土壌の深さO-1OcmのpHは造成2年後に4以下に低下したが、造成3年後の深さO-5cmのpHは5にまで上昇した。4)T区の酸性硫酸塩土壌の深さ20cmまでの易酸化性イオウ含量は造成3年後までに大きく減少した。5)造成4年後の5~1O月の植生基盤土壌水分はS区でpF4.2以上の時が多かったのに対し、T区では常時4.2以下で湿潤であった。以上から、中和工法では酸性硫酸塩土壌層での中和とS含量の低下が進行し、牧草根が成長して、水分を吸収できたため、牧草が生育でき、安価で有効な緑化工法である。 |