堤防は、河川の流水を一定の流路内に流下させ氾濫を防止するための重要な河川工作物のひとつであり、主に盛土によって築造される。近年、河川沿岸部への人口の集中が著しく、防災構造物としての堤防の重要性が高まっている。このため、一旦破堤するとその被害は莫大となることから堤防の一層の安定性の向上が必要である。北海道では、過去に河川周辺に分布する多様な土を用いて堤防整備を急いできた経緯がある。このため、堤防の内部が不均質、不規則であることが推定され、堤体の強度は不明確な面がある。これまで、堤防の構造を明らかにする目的で、簡易な調査法である多成分コーン貫入試験機を用いて河川堤防を調査し、この方法が砂質土と礫質土において有効であることを確認してきた。本調査では、軟弱地盤上の堤防を対象として多成分コーン貫入試験機を用いて調査することにより軟弱土の堤防調査の有効性を確認するとともに、動的外力に対しての土の挙動分析に広く用いられるせん断弾性波速度(S波)を多成分コーン貫入試験機と速度検層により測定し比較した。その結果、多成分コーン貫入試験機は、軟弱土の調査にも適用可能であり、S波の測定も可能であることがわかった。 |