北海道においては、酪農の急速な発展とともにそのふん尿の有効利用が環境保全の観点からも大きな課題となっており、酪農地帯における養分フローの中で、農業系外である環境への負荷量を抑制していくことが必要である。[*]北海道留萌支庁管内のふん尿処理・利用を一体的に実施している酪農家3戸(草地113ha、乳牛:258頭)からなる地域において、窒素に関わる収支・循環の検討を行った。購入肥料と購入飼料から13.8t-N(年間、以下同)が人為的に搬入された。降雨から0.4t-N、マメ科牧草による窒素固定で6.8t-Nも自然に系内に入った。自給牧草から17.1t-N、購入飼料から8.8t-Nが乳牛に与えられた。この内、人為的に系外へ搬出されるのは、748tの牛乳に含まれる3.4t-Nと廃牛に含まれる0.5t-Nに過ぎず、19.2t-Nがふん尿として排泄され、ふん尿からのアンモニア揮散等により5.8t-Nが大気を主体とした環境に排出されていた。これは、地域内に入る21.0t-Nの約3割にもなる。[*]調査対象地域では、肥培かんがい施設が整備され、ほとんど全てのふん尿が利用されており、たれ流しなどはない。ふん尿貯留施設や散布農地などが不充分な酪農家では、上記の3割よりもさらに大きな窒素損失が生じていると推定され、これを削減することは、資源の有効利用と環境保全のために今後の課題である。 |