道内で発生した大規模地震において、道路盛土の被害が数多く発生した。とりわけ1993年の釧路沖地震では、複数の箇所に道路盛土が大規模に崩壊し、長期にわたる通行止めなど交通に大きな影響を与えた。これらの盛土被害は、基礎地盤が良好な箇所においても発生しており、盛土内の浸透水が素因となって、地震動による盛土の強度低下が生じ、崩壊に至ったと考えられている。[*]ここでは、釧路沖地震での道路盛土被害を事例にとり、道路盛土に求められている耐震性を検討した。さらに、動的遠心模型実験を実施し、浸透水が存在する盛土の地震時挙動、その評価方法および対策工法について検討した。その結果、以下のことが明らかとなった。[*]①のり面の表層崩壊程度の形態であれば、最低限の道路機能は確保されることが裏付けられた。つまり、この程度の崩壊を許容することが、道路盛土に求められる耐震性として合理的である。[*]②盛土内に浸透水がある場合、地震によって盛土内の過剰間隙水圧が上昇する。盛土崩壊の原因は、それに起因する有効応力の低下が支配的である。[*]③ピーク時の過剰間隙水圧と最大加速度をかなり低減した水平震度を同時に考慮した円弧すべり計算によって、②のような場合の地震時安定性を評価可能である。[*]④②のような場合の対策工法として、のり尻にフトン寵を設置し、地震時の過剰間隙水圧の発生を抑制することが効果的である。 |