港湾・漁港の整備を行うに際しては、周辺に生息する生物との共生を目指して「環境との共生を目指した港づくり」や「自然調和型漁港づくり」に取り組んでいる。一方、防波境などの沿岸構造物の周辺海域には、様々な水生生物が生息している。そのなかの1つで底質中に生息するマクロベントスは、有機物(生物の死骸であるデトリタスを含む)を摂食することによる海水や底質の浄化の役割や、上位捕食者の餌となる役割など海洋生態系において重要な役割を果たしている。また、閉鎖性内湾などにおいては、底質などの自然環境に関する生物指標としても知られている。本研究では、苫小牧港(東港).と石狩湾新港の現地調査結果を基に、開放性砂丘域において防波堤などの沿岸構造物の建設が周辺の自然環境に与える影響について、底生生物の生息状況から検討した結果、以下のことがわかった。[*]①細粒分含有率と強熱減量の高い地点は、波当たりの弱い港内や水深の深い地点に多い。[*]②底生生物の種類数と個体数は、遮蔽効果の大きい港内が多い。また、海域や季節による違いが認められた。[*]③底生生物の生息環境に及ぼす要因としては、波浪が大きく関係していると考えられる。底生生物の多様度は、流速の影響が大きく、底質の影響は小さいと考えられる。 |