近年、公共事業の実施に際しては、美しい国づくり政策大綱以来の施策等の拡充や、景観に対する市民意識の高まりを受け、景観への配慮やその検討の必要性が高まっている。しかしながら、良好な景観が地域にもたらす効果を、評価・比較しやすい形で示すための手法は確立されておらず、これが景観に関する取組みの実施や合意形成を難しいものとしている。本論文は、景観が地域にもたらす効果に関する研究の一環として、都市再生整備計画事業の事後評価結果に関する分析などをもとに、その評価指標のあり方などについて検討した結果を報告するものである。調査対象とした186の都市再生整備計画事業の事後評価結果からは、商工観光や人口関連の統計的指標の達成度が相対的に低いことが確認されたが、一方で、これら統計的指標の達成度と「満足度・好感度」に分類される指標の達成度との間に、他の評価指標間と比較してより強い関連性のあることがわかった。これらの調査結果や、消費者の意思決定プロセスを示す「CAB」モデルなどの考え方をもとに、景観の効果の発現プロセスについて検討を行い、景観の効果の発現を「認識・意欲・行動・統計・供給」の5段階によって把握するモデルを提案した。
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