地山補強土工法は、不安定切土法面の永久安定工法として国内で多く用いられている。しかしながら、寒冷地においては、地盤の凍上現象が原因であると推測される変形・破損などの被害事例があり、深刻な問題となっている。一方、地山補強土工法 設計・施工マニュアルでは、地盤の凍上がもたらす凍上力を見込む手順は見当たらず、この点に関しては考慮していないのが現状である。このため、地盤工学会北海道支部において2011年4月に設立された「凍上対策工の調査・設計法に関する研究委員会」では、「地山補強土に作用する凍上力をどのように見込むべきか」ということが検討課題として挙げられている。その解決策の入口として、まず「実際にどの程度の凍上力が作用するのか」ということを把握する必要があることが共通認識となっている。
以上のことを背景とし、これまでの研究では地山補強土工に作用する凍上力、頭部プレートの変位量、地盤の凍上量および凍上力に影響を与える凍結深さなどの各要因を実際に数カ所現地計測し、その結果を取りまとめた。本研究では、これまでの実測結果の中で凍上変位が顕著に現れた箇所の2冬期分の実測データから、地山補強土工に作用する凍上力の影響要因を分析して報告する。 |