| シロザケ、サクラマスなどのサケ科魚類は、親魚が産卵のため海から河川へ遡上し、幼魚が河川を降下し海で成長します。しかし、畑地に水を取るための頭首工やダムなどの構造物が河川内に存在すると、魚類の移動は大きく制限されます。そのため、河川内の構造物をう回させて魚類を上下流に移動させるための「魚道」と呼ばれる魚の通り道が、河川内構造物に設置されています。魚類の生息環境を保全するためには、魚道が適切に機能しているかの評価が必要となります。
北海道美利河ダムでは、より多くの降下魚を魚道へ導くことを目的に河川と魚道を接続する箇所に分水施設を設置しました。分水施設がない場合、魚類は魚道の入り口を見つけられずにそのままダム湖に進入してしまい、海へ降下が出来ない可能性が指摘されていました。分水施設の機能は重要であるにも関わらず、分水施設内における魚類の定量的な降下行動の評価はほとんどなく、分水施設が目的通り機能しているかが不明でした。
本研究では、バイオテレメトリー手法を用いて美利河ダム上流に生息するサクラマスの幼魚(スモルト)の降下行動を調査することで分水施設の機能評価を行いました。バイオテレメトリー手法とは、生物に小型の発信機などを取り付け、行動・生理・環境についてのデータを遠隔測定し、行動や生態を調査する研究手法です。近年では、体長10cm程度のスモルトなどの小型魚にも装着できる発信機を開発されています。このような機器を用い、今まで解明できなかった魚の行動などの把握が可能となります。
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