| 本研究は融雪出水中の基礎生産構造と植物プランクトンの群集構造の変化について解析を行った。水質等の観測は2012年融雪出水時の5月1日、5月10日、5月28日に実施し、水質および植物プランクトンを用いて群集解析による類型化を行い関連性の検討を行った。当海域の融雪出水時における基礎生産構造および植物プランクトンの群集構造に関する調査・検討結果を示した。主要な結論を以下に示す。
1) 融雪出水時の基礎生産構造は、出水に伴う栄養塩供給により植物プランクトンが増殖する。出水と同時に濁水で光量不足となるが夜間の表層冷却に伴う鉛直混合によって基礎生産が維持される。2) 融雪出水時の約1ヶ月の短期間で、流量に伴って植物プランクトンの種組成や優占種が大きく変化しており、これらの生息場には河口からの距離や水深との関係性が示唆された。3) 植物プランクトンは、温帯域に広く分布する珪藻綱のChaetoceros radicansが優占する群の主体であり、Thalassiosira pacificaや沿岸性の小型種である有殻渦鞭毛藻綱のHeterocapsa rotundataが優占する群が一時的に出現した。4) 本調査においては水質と植物プランクトンのクラスター空間分布は似た傾向にあり、調査時期、調査地点の水深、鵡川河口からの離岸距離により、水質と植物プランクトン種組成の関係性を概ね説明できた。
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