積雪寒冷地である北海道では、融雪流出を貯留して灌漑用水として利用するため、積雪が重要な農業用水資源である。将来、温暖化すると、積雪水量や融雪時期の変化が水収支に影響を与えるため、農業用水を安定して確保するためには、流出の変化の予測が必要である。筆者らは過去に、2カ所のダム流域と1カ所の頭首工流域を対象として流出の変化を予測した。しかし、対象流域のそれぞれの平均標高が低く、平均標高の流域間の差も小さかった。このため、これらの流域よりも、平均標高が高く、平均標高の差が大きい3流域を対象にして、流出の将来予測を行った。
その結果、次のようなことが明らかになった。①流域面積のうち、温暖化の影響を受けやすい標高範囲の占める割合が大きい場合、融雪流出ピーク日の早期化の程度は大きい。②流域内の最低標高と最高標高の差が大きく、なおかつ流域を構成する標高に偏りが小さい場合には、融雪開始時期の早期化の程度が小さい。③融雪期総流出量は、流域の平均標高が低いほど減少率が大きい。④灌漑期総流出量は、流域の平均標高が低いほど減少率が大きい傾向があるが、現況で融雪流出の大部分が4月末までに終了するような、平均標高の低い流域ではこの傾向があてはまらない。
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