凍害は、寒冷地のコンクリート構造物でみられる代表的な劣化の一つである。凍害に対する耐久性設計法の整備は、寒冷地のコンクリート構造物を適切に設計・維持管理する上で重要な問題となっている。凍害を防ぐにはエントレインドエア(AE)を適切に導入し、未凍結水の移動圧の緩和を図ることが基本である。一般にAEを導入するとJIS A 1148に準じた急速凍結融解試験において高い耐久性指数が得られやすくなる。ところが寒冷地のコンクリート構造物は凍結融解に加え、凍結防止剤や夏期の乾湿繰返しなど、環境に関する多くの外的作用を複合的に受ける。このような環境下では、空気量が管理されたコンクリートでも凍害が大きく進行することがある。さらに、同じ寒冷地でも凍害の進行速度は地域や部位によって異なる。コンクリート構造物を長期にわたって合理的に維持管理するには、供用期間中に耐久性が時間軸に沿ってどのように低下するかを定量的に把握し、適切な時期に計画的な対応をとることが大切である。すなわち、地域的な特性が考慮された耐久性設計法が求められる。寒地土木研究所では、凍害の進行を適切に予測する研究に取り組んでいる。その成果は北海道土木技術会コンクリート研究委員会コンクリート維持管理小委員会が平成25年12月に発刊した実践的な技術資料「北海道におけるコンクリート構造物の性能保全技術指針」にも反映されている。本稿では、この指針に掲載されている凍害の予測に関する内容を紹介するとともに、凍害に対する耐久性設計の今後の課題と展望を述べている。 |