積雪変質モデルによる精度の高い雪崩発生予測を目的として,北海道の山岳多雪地域にある中山峠と内陸少雪地域にある陸別町で各3冬期に,雪崩の発生する確率が高い降雪開始から72時間以内の新積雪を対象に,密度とせん断強度の関係式を求めるための断面観測を行った.その結果,中山峠での新雪がしまり雪に変態する過程の積雪のせん断強度は,これまでわが国の積雪変質モデルで一般的に使われてきた,主に本州平地で行われた観測結果に基づく式と比べると,密度150,220 kg m−3では30,21%にしかならなかったが,カナダの山岳域で観測された式と比べると密度60~220 kg m−3でほぼ一致した.一方,陸別町での観測結果ではこれまで明らかにされてこなかった降雪直後の新雪がしもざらめ雪に変態する過程の積雪の関係式が得られ,これをカナダの弱層で観測された式と比べると,密度150,250 kg m−3で50,33%と小さかった.これは,陸別町での表層の温度勾配が大きいためしもざらめ雪粒子が急成長し粗大化した上,低温下のままで経過し焼結が進んでいないためと考えられる.寒冷地域での乾雪表層雪崩の発生予測では,本研究成果を用いた見直しが必要である. |