土木施設には,期待される機能の観点から望ましい色彩が存在すると考えられるが,施設単体の機能発揮だけではなく,整備する空間全体の景観にも配慮する必要がある.しかし,土木施設の色彩設計に関しては,一般に現場技術者が参照できる技術的指針がないため,不適切な色彩の採用による景観へのダメージだけでなく,施設の機能低下に繋がっている事例も少なくない.景観ガイドライン等における色彩の記述も限定的であり,さらに積雪寒冷地といった条件は考慮されていない.
そこで,施設の機能発揮と景観向上に貢献する効果的な色彩設計方法の検討に向けて,まず積雪寒冷地における環境色の変化と道路施設の色彩の関係を分析した.北海道の沿道特性の異なる5路線において,夏,秋(紅葉・黄葉期,落葉期)および冬に撮影した道路景観写真から15×10分割のモザイク画像を作成し,各モザイクの色相・明度・彩度を計測した後,ムーン&スペンサーの色彩調和論をもとに積雪寒冷地における道路施設の色彩の現状と課題を考察した.その結果,環境色の季節変化が著しい積雪寒冷地においては,標準的に用いられているダークブラウンは環境色に対し調和的でない可能性が確認された. |