筆者らは、有機質肥料を採草用草地へ施用することによる、草地土壌の理化学性改善効果の比較検討を行っており、同時に有機質肥料施用に伴う温室効果ガス揮散量を計測している。本稿では化学肥料および複数の有機質肥料を施用した試験区における温室効果ガス揮散量の結果を報告する。[*] 試験圃場は北海道別海町内の採草用草地で、土壌は黒色火山性土である。この圃場内において、化学肥料および5種類の有機質肥料をそれぞれ2m×2mの試験区へ施用した。散布量は北海道施肥ガイド2010(北海道農政部)に従い、有機質肥料の肥料成分分析結果をもとに算出した。有機質肥料で不足する肥料成分については、化学肥料(硫酸アンモニウム、過リン酸石灰、硫酸カリウム)で補った。これを早春(2013年5月16日)と一番草刈取後(7月4日)の2回に分けて施用した。温室効果ガスの測定はチャンバー法により行った。[*] その結果、化学肥料区を除き、有機質肥料施用区では施肥直後にCO2フラックスが大きい値を示した。測定期間中の平均値では、化学肥料区と比較して、原料スラリー区を除く他の有機質肥料散布区で大きい値を示した。現地での施肥状況を見ると、原料スラリーと比較して発酵処理した有機質肥料は土壌中への浸透が速やかであり、このことがCO2フラックスの違いに影響している可能性がある。CH4フラックスの推移では、消化液C区および曝気スラリー区で、早春施肥時に大きい値を示したが、一番草刈取後施肥時には消化液C区のみ大きい値を示した。また、N2Oフラックスの推移では、消化液C区および曝気スラリー区で、一番草刈取後施肥時に大きい値を示したが、早春施肥時には顕著な増加を示さなかった。測定期間中の平均値は、CH4およびN2Oとも、化学肥料区より有質質肥料施用区が大きい値を示した。CH4とN2Oについては、施肥直後以外でも、フラックスが大きく上下する場合があり、今後、土壌水分などのデータの整理を進めて、要因を精査していきたい。 |