大規模酪農地帯の広がる北海道東部の牧草地において,消化液などの有機性肥料の施用が草地土壌の理化学性や団粒形成量に及ぼす影響を明らかにするために,施用試験を行った.化学肥料区と比較して,原料液区および消化液区では牧草根由来の炭素の集積や有機性肥料の炭素の一部が残存することで表層土壌の炭素が増加しており,草地土壌においても有機性肥料の施用が土壌炭素貯留に有効であると考えられた.このような現象がみられたのは表層1層目(0~5cm)のみであり,本研究では少なくとも5年程度の施用が必要であることが明らかとなった.表層1層目のみに炭素の集積がみられた要因として原料液区および消化液区では,表層1層目の牧草根重が増加していたこと, 施用した有機性肥料の有機物が表層1層目に沈着・吸着したこと,表層5~15cmに透水性の低下した層が形成されていたことで有機物の沈着・吸着がさらに促進されたことなどが考えられた.施用7年目の表層1層目の土壌では,消化液区において>1,000μmの画分のマクロ団粒が化学肥料区と比較して増加していた.消化液区では, 表層1層目の牧草根重が増加しており,牧草根によってミクロ団粒が結合されることでマクロ団粒の形成が促進されたと推察された.消化液区の>1,000μmの炭素分布量をみると特に>53μmの粗粒有機物画分に炭素が集積していた.マクロ団粒内での炭素の集積が確認されたことから,有機物組成の分析を行ったところ消化液区の>1,000μmの団粒内には難分解性有機物が集積しており,マクロ団粒の維持に寄与していると推察された.マクロ団粒形成による土壌物理性への影響を検証したところ,化学肥料区と比較して有意な差は確認されなかった.これは,本研究圃場が黒ボク土地帯で有機物含量が多いために化学肥料区と比較して、明瞭な差にならなかったためと考えられる. |