厳しい財政状況の下で、多くのコンクリート構造物を適切に使いこなすには、コンクリート部材の長寿命化を図るとともに、維持管理を的確に行うことで、大規模な修繕・更新をできるだけ回避し、中長期的な維持管理・更新に係るトータルコストを縮減・平準化させることが大切である。このことをふまえ、安全性や経済性を踏まえつつ、損傷が軽微な早期の段階に予防的な補修・修繕を実施することにより、構造物の機能保持・回復を図る「予防保全型維持管理」の導入が推進されている。寒冷地のコンクリート構造物は、凍結融解と塩化物(凍結防止剤や海水等)の複合作用を受けやすい苛酷な環境に曝されている。これらの環境作用は、スケーリング(コンクリートの表面がうろこ状に剥離する形態の凍害劣化)の促進や塩化物イオン浸透量の増加につながることが知られており、コンクリート部材の耐久性低下が懸念される。凍・塩害の発生・進行を遅延させる考え方としてコンクリートへの水や塩化物イオンの侵入抑制があげられ、その実現が期待される材料の一つにシラン系表面含浸材がある。本稿では、シラン系表面含浸材の特徴を述べるとともに、寒冷地の道路橋コンクリート部材へ適用したときの凍・塩害抑制効果の検証結果および寒冷地の道路橋を管轄する北海道開発局におけるシラン系表面含浸材の仕様・要領の概要について紹介する。 |