深層混合処理工法の研究開発は昭和40年代に着手され,昭和50年代にはスラリー式,粉体式ともに実用化された.いずれのタイプも高規格道路といった比較的に高い盛土の安定対策などで適用され,その実績は現在に至るまで着実に増加している.深層混合処理工法は,数ある地盤改良技術の中でも汎用的な工法として位置付けられていることもあり,セメント改良土(以降,改良体)の強度特性に関しては各研究機関で詳細な調査が実施されている.しかしながら,急速に普及してその改良効果は既に認知されているが,改良体の長期的な強度および劣化傾向に関しては不明確な点が多い.
そこで本調査では,1984年に粉体式深層混合処理工法(以降,DJM工法)で施工された改良体(施工後30年経過)に対して強度試験(一軸圧縮試験,針貫入試験)を実施し,改良体の長期強度特性および改良体表面の劣化状況,改良体周辺地盤のpHについて検証した.その結果,DJM改良体は30年経過しても,改良体の中心部を含む大部分が強度増加傾向にある一方で,未改良地盤に接している改良体表面部の強度差が顕著であった.しかし,強度低下は改良体周面の「薄皮」に相当する部分であることや,強度差があっても設計基準強度を大きく超過したことを考慮すると,改良体の構造上および機能上,特に問題が生じるとは考えにくい.また,改良体周辺地盤へのカルシウム分の溶出は,長期的にも限定的であることが推察された.
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