積雪寒冷地の北海道では,吹雪による吹きだまりや視程の悪化による道路交通障害が多発している.安全な生活環境や社会・経済活動を維持するためには吹雪を抑える対策が不可欠である.道路施設による吹雪対策には,防雪柵だけでなく道路防雪林(以下,防雪林)がある.しかし,吹雪を効果的に防ぐ物理的メカニズムは完全には明らかになっていない.たとえば,雪原を輸送される飛雪粒子は風(気体の流れ)に追随するものの完全に一致するものではない1).防雪林や防雪柵などの構造物周辺においても,挙動が異なると考えられるが,防雪林を通過する風と飛雪粒子の挙動の差異に関する事例は,知る限りでは,調べられていない.また,防雪林は,植物であるため生育環境に影響される.たとえば,樹木の生長に伴う日照不足により下枝が枯れ上がり,地表面付近で樹木による遮蔽率(=1-空隙率)が変化する.さらに,風上から風下における防雪林の幅(以下,林帯幅)に関しても防雪林ごとに異なる.このように,防雪林における防雪効果を明らかにするためには,防雪林を通過する飛雪粒子と風の挙動だけでなく,遮蔽率,林帯幅など,多くのパラメータを明らかにする必要がある.そこで本研究は,防雪林の防雪効果を段階的に解明することを目的とし,まずは林帯幅の異なる防雪林を通過する風速の変化について調査した. |