降雪が道路構造物(橋梁や道路案内標識など)に着雪して成長すると,着雪が自重によって落下する.道路構造物からの落雪は,交通車両等の破損や視界阻害による事故を誘発する可能性がある.道路構造物において着雪や落雪を防ぐための着氷雪除去は,主に人力で行われているうえ,高所作業が必要になる場合があるなど,作業の手間やコスト負担になる.このため,道路構造物への難着雪法の開発に対する社会的要請が大きい.難着雪法には主に部材の性質を変える性状変更等がある.性状変更の一つとして,生物模倣を利用した方法が近年注目されている.超短パルスレーザーを金属表面に照射し掃引すると,レーザー波長程度の微細な溝の周期構造が自発的に形成されることが知られており,レーザー誘起表面周期構造(LIPSS)などと呼ばれている.LIPSSによる表面性状変更には,たとえば,水滴が蓮の葉に付着せずにコロコロと転がり落ちるような撥水特性が付与されることが知られており,部材に付着した不純物などを取り込みながら水滴が滑り落ちる自浄機能への利用が期待されている.LIPSSの技術は着雪対策に利用可能と思慮されるが研究例は少なく,また耐候性の面で不明瞭な点が多い.なお,水滴と雪・氷とは物理メカニズムが異なるので,撥水特性は雪や氷には向かないという報告もある.
本稿は,道路構造物に利用される金属を対象に,LIPSSの技術を利用した道路構造物における落雪対策について研究を開始したので報告するものである. |