土木事業では重金属類が含まれた掘削土砂や岩石が,屋外に一時的に仮置きされる場合がある。掘削土砂や岩石が暴露されると,降雨や降雪などによって環境基準値以上に重金属類を含む浸出水が生じることがある.この浸出水は,人体への影響や周辺環境を保護する観点から適切な処理が求められる.近年,植物の重金属等の吸収能力を用いた低コスト,低エネルギーな浄化方法に関する研究が行われているが,その適用では,植物の生育条件や水量に応じた合理的な活用方法が求められる.そこで,本実験では,幅1.8m,長さ7.0mの貯水槽に,セレンを含む浸出水(総量15.3㎥)を試料として,重金属等の吸収能力を有する植物のうち,カヤツリグサ科マツバイを水槽内に湿潤重量で33.6kgを浮かばせて,セレンを吸収させる実験を24週間実施した.なお,実験では,浸出水のpH,ECおよび濁度を測定するとともに,採取したマツバイのセレン含有量を分析した.実験の結果,浸出水のセレン濃度は,初期値0.086mg/Lから21週目で0.008 mg/Lと環境基準値以下となった.また,pHは6.6から7.4,ECは609から695ms/m,濁度は初期値160であったが2まで低下した.一方,セレン含有量は初期値0.1mg/kgから8.9 mg/kgに増加したことを確認した.以上のことから,貯水槽に滞留させた浸出水のセレン濃度をマツバイによって低下させることができた.また,通常の処理コストより58%低いコストで浄化させることができた. |