現在、多くのトンネルにおいて、切羽記録や先進ボーリングなど施工中の地質情報が十分整理・活
用されないままトンネルの維持・管理・点検が行われており、合理的な施工や維持の課題となってい
る。本報文では、火山岩類からなる地山を掘削した山岳トンネルを対象に、トンネル切羽の3連続写
真画像から地層境界、貫入境界、断層などの地質構造の走行傾斜を最小二乗面として近似計算するこ
とで推定した。さらに、推定した地質構造に空間座標情報を付加し、切羽観察結果およびボーリング
コアの観察結果を参考にトンネル地山の地質断面図を再構成し、この地質断面図を用いて、湧水箇所
や変状箇所などの施工情報と地質との関係について考察した。その結果、湧水については固結した火
山砕屑岩中の岩相変化に伴う地下水の通り道の形成、トンネル変状については2次的な硫化鉱物の鉱
染作用の局在が発生要因と解釈され、現在供用中の同トンネルの今後の維持・管理・点検への活用の
方向性を示した。このような地質解釈・評価は同トンネルの維持・管理に重要であるのみならず、類
似の地質状況下での建設事業などへの地質情報の提供、CIMや学術調査の基礎情報としての利活用が
期待される。
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