平成28年8月,3個の台風に続き,前線と台風が接近したことで,歴史的で記録的な豪雨となり,道東を中心に河川堤防からの越水や決壊による氾濫,道路の崩壊や落橋など大惨事となった.とりわけ道路交通網の被災は,社会経済や日常生活にも影響を与え,孤立集落を生むなど重大な損害をもたらした.その中でも橋梁被災の復旧に要する費用と時間は莫大であった.これを受け,管理関係機関は今後の水防災対策のあり方について検討委員会を設け,橋台背面の洗掘等による橋梁被災要因の分析と有効な対策の検討が急務,との提言1)を取りまとめた.しかし,河床変動等の計算力学研究事例はあるが,新たな対策工提案に至る研究は見当たらない.そのためか現況復旧工事が主で同規模の洪水が発生すると再度被災されるのは必然である.そこで,既往研究では橋台背面盛土の保全対策を立案することを目的に,橋梁被災箇所の状況分析を行った.この結果,被災箇所は支川上流部に集中しており,橋梁背面盛土の被災誘因の多くは,直接的な洪水の流体力による洗掘,あるいは河川水が構造物境界に浸透することによる吸い出しであることが確認された.また,橋台背面盛土が被災されない場合,橋梁本体に影響しない場合があることも判明した2).
本研究では,既往研究の調査結果をもとに,恒久復旧や予防保全に寄与できる橋梁背面盛土の保全技術を選定するとともに,水理模型実験により被災変状メカニズムを解明しつつ,選定した対策工技術の効果を検証した. |