本研究は,日常的に実施されている道路斜面点検の高度化のために,情報取得が容易なデジタル写真を活用した,岩盤斜面の変状箇所を背景差分法により客観的に把握する手法の開発を目的として,これまでに岩盤斜面の地上からの点検写真を前提とした方法のマニュアルを公開してきた.近年のUAVの目覚ましい技術革新を受け,点検時期の異なる2枚のUAV空中斜面写真に対しても,変化箇所の把握が可能となるように手法改善を検討することにした.背景差分法により画像の変化箇所を抽出するためには,ある程度構図の揃った画像を比較する必要がある.そのため,同じ機材での撮影より撮影諸元が変わる異なる機材での撮影の方が,また,撮影の自由度の違いから垂直写真より水平写真の方が,構図一致の難易度は高くなる.これまでに,同じ機材による撮影では自由度が大きく難易度の高い水平写真に対して,また,異なる機材による撮影では自由度が小さく難易度の低い垂直写真に対して,背景差分法が適用できるUAV撮影方法やその後の画像処理方法等を検証してきた.そこで本稿では,最も厳しい条件となる異なるUAVで撮影した水平写真に対して,軸を揃えた疑似オルソ画像を作成することで背景差分法を適用可能に改善できたので紹介する. |