本研究では、基幹的な灌漑用水路における大規模地震災害時の災害対応力を強化するため、現行の災害対応計画
における課題を明らかにして、その課題解決に資する新たな災害対応計画の策定方法を提案する。本研究で事例と
した灌漑用水路における現行の計画では、地震発生後に施設管理者がほぼ単独で灌漑用水路の現場において災害対
応を行う。この計画に対して、地震発生後、直ちに複数名の施設管理者がそれぞれ取水ゲートまたは放流ゲート設
備に急行して災害対応にあたる計画を提案し、その場合における各ゲート設備への施設管理者の割当人数を最適化
する方法を構築した。さらに、大規模地震災害時には、水管理システムの水位データのみによって水路における被
害の有無を把握することが困難であるため、万一の被害発生にも即座に対応可能な災害対応体制が現場において構
築できるか否かを判断基準として、取水ゲートを閉鎖するか否かの意思決定を行う方法を提案した。こうした現行
の災害対応計画の改善効果を、FTA(Fault tree analysis)を用いて評価した結果、地震発生直後の災害対応が遂
行不能になる確率は大幅に低減されることが分かった。
|