| 表面含浸工法は,コンクリート表面に所定の効果を発揮する材料(表面含浸材)を含浸させて,表層部の改質を図る工法である。表面被覆工法に比べて施工が簡易でコストが低く,無色透明で維持管理性に優れる特長を有していることから,コンクリート構造物の予防保全対策や経年劣化に対する補修工法として広く適用されている。表面含浸材として分類される材料は,主に建築分野で30年以上前から適用されている。土木分野については,2005年4月に,「土木学会:表面保護工法設計施工指針(案)」が発刊され,表面含浸工の設計施工マニュアルおよび表面含浸材の試験方法(案)(JSCE-K571-2004)が示されたことにより,適用されるようになったものと考えられる。また,「土木学会:コンクリートの表面被覆および表面改質に関する技術の現状(2004年2月)」と,それに続く「土木学会:コンクリートの表面被覆および表面改質技術研究小委員会報告(2006年4月)」の2期にわたる委員会報告により,材料の分類や,技術的な課題,新たな性能評価試験方法の案などが整理され,さらに適用が拡大した。著者らは,こうした土木分野の動向と時を同じくして,シラン系表面含浸材の中でも,シリコーン分子のモノマーであるシランと,ポリマーであるシロキサンが調整されているシラン・シロキサン系と称される材料を研究開発し,実構造物への適用を図っている。この過程では,表面含浸材による高い効果を付与するための概念に基づいた材料の調整から,室内試験による初期性能の評価,さらには暴露試験による長期耐久性の実証を進めてきた。本稿では,暴露試験の期間が15年間に達したことを機会として,これらの一連のシラン・シロキサン系表面含浸材の研究開発を総括する。 |