近年、北海道の水田地帯では、労働生産性を向上させるために、水田圃場の大区画化および地下水位制御システムの整備が進められている。こうした圃場整備において、用水路の形式が開水路からパイプラインへ変わる場合、流出機構の変化が農地周辺の水環境に影響を及ぼす可能性がある。こうした影響への対策を立案するには、用水路形式が開水路およびパイプラインである圃場群における水収支および周辺排水路の水質の変化を把握する必要がある。筆者らは、その第一段階の作業として、開水路で灌漑される2つの圃場群の水収支および水質を調査した。その結果、整備済み圃場群および未整備圃場群では、それぞれの圃場群への流入水量のうち、配水管理用水の占める割合は37%および43%となった。代かき・田植えの時期では小排水路におけるT-N、T-PおよびSSの濃度が高くなるが、幹線排水路ではそれらの値が低く、配水管理用水による希釈効果が生じていると推察された。また、その希釈効果により、小排水路の水質濃度が大幅に低下したことがわかった。用水路の形式が開水路からパイプラインへ変わる地域では、配水管理用水が不要となることから、圃場排水が希釈されずに高濃度のまま流下するおそれがある。 |