シラン系表面含浸材は,コンクリート表層に吸水抑制機能を付与し,コンクリート内部への水や塩化物イオンの侵入を抑える浸透性の保護材である.同じ表面保護工法である表面被覆材や断面修復材に比べると工程が少なく,短期間で施工ができ,簡便で安価であることや,コンクリート表面の外観を大きく変えないため,施工後も目視による日常点検が可能である等の特徴を有している.近年,コンクリート構造物の維持管理において,予防保全の重要性が広く認識されていることもあって,シラン系表面含浸材の適用事例が増えている.さらに,新設や打換えコンクリートに加えて,変状が軽微な既設コンクリートにおいても,性能低下を抑えることを期待して適用されるケースもある.一方,塩化物イオンの供給を受けた既設コンクリートへ表面被覆材や断面修復材を適用すると,塩化物イオンの侵入は抑えられるものの,先に浸透した塩化物イオンが濃度の低い内部へ再拡散する事例が報告されている.塩化物イオン濃度勾配が形成されているコンクリートへシラン系表面含浸材を塗布した場合,コンクリートはその後も塩化物イオンの供給や乾湿の繰り返しを受けるが,これらの作用が塗布後の塩化物イオン濃度勾配の変化に及ぼす影響について検討された事例は少ない.そこで,塩化物イオン濃度勾配が形成されているコンクリートへシラン系表面含浸材を塗布し,その後に作用する塩化物イオンの供給や乾湿繰り返しが塩化物イオン濃度勾配の変化に及ぼす影響について実験的に調べた. |