| 寒冷地の道路コンクリート構造物は凍結融解と凍結防止剤による複合作用を受けやすく,とりわけ,耐凍害性を高めるための適切な配合設計が求められる.一般に,エントレインドエアーが導入されたコンクリートは,水セメント比が小さいほど耐凍害性は高まることが知られており,水セメント比はできるだけ小さく設定することが望ましい.しかし,凍害環境の厳しさは地域によって異なるため,不経済な設計とならないよう,水セメント比は地域の環境条件を考慮し,合理的に設定することが大切である.コンクリートの凍害形態は,スケーリングなどの表面劣化と,微細ひび割れなどの内部劣化に大別される.土木学会コンクリート標準示方書「設計編」は,凍害に対する照査は表面劣化と内部劣化に分けて行うことを原則としている.著者らは既報の暴露実験において,表面劣化であるスケーリングに対しては,長谷川が開発した凍害発生の危険性を数値化した凍害危険値,凍結防止剤の散布回数,および,セメントの種類が,実環境で適切な水セメント比を設定する際に有用な指標となることを示した.本論文では表面劣化に加えて,内部劣化にも着目し,実環境で耐凍害性を高めるための適切な水セメント比の設定方法について考察した. |